〜石灰岩地の春〜

4月3日

カタクリ
春の林床を彩り、5月にはもう地上から消えてしまう草花を”Spring ephemeral”と呼ぶそうだが、カタクリはその代表といってもいい花で、木漏れ日を受けて開くその花はいろんな表情を見せ、まるで妖精のようでもあり、ピンと跳ね返った花弁はバレリーナのようでもある。


スハマソウ
ミスミソウという名でも呼ばれるがいずれも三中裂し緑のままで冬を越すその葉っぱの形から名づけられた。2月中旬から咲くところからユキワリソウという名もある。こんなにたくさんの名があるのは春を待ちわびる人の思いだろうか。濃い紅紫から白まであるが今回見たのは白ばかりだった。




シロバナネコノメ
川床にたくさん広がっていた。すぐ横をせせらぎが流れていくような場所だ。ネコノメソウ属には珍しく白い花弁がありよく目立つ。特にヤクの赤がかわいく印象的だ。岡山県が分布の東限だそうで、近畿より東にはよく似たハナネコノメがある。




レンプクソウ
北半球には一属一種だというこの花を見つけたのは数年前のことだった。岡山には希少だと思い込んでいたが土手を埋め尽くすほどに咲いていた。小さく地味だが、細かい葉が美しく、金平糖のような花を見ると、茎先に5輪付いている。しかも頂上の花が4裂、周りにあるのが5裂といった繊細なつくりだ。




カテンソウ
敷き詰めたように群生するこの花も石灰岩地に多い。雄花は葉より上まで柄を伸ばし紅紫の蕾が開いて白いおしべが放射状に開く。これもまた小さい花だがよく見ると趣がある。




ヤマアイ
山地の路傍にいっぱい広がっている。ヤマアイは万葉集にも歌われているが古くから染色植物のひとつであったらしい。ただしいわゆる藍染のアイは中国からの伝来でこれとは別種。このヤマアイで染色を試みた友人の話ではごく薄い青色を得たとのことだったが私が試したわけではないので定かではない。




ヤマエンゴサク
ケシ科のこの花も早春の山辺で出会うことのできる可憐な花の一つ。




イブキスミレ
昨年早春にも出会い、タチツボスミレとしていたスミレなのだが、今年はちょっと手で触れ、その葉っぱの葉脈がへこんでいるといった特徴からイブキスミレであろうと確認した。
西日本でのイブキスミレは伊吹山とこの阿哲地方に分布が限られており、石灰岩地で群生するようだ。
葉は出始めにはヘリがまいているというのも特徴の一つ。ちょっと大ぶりで柔らかい雰囲気がなかなかいいと思った。




アマナ
ユリ科のこの花は田のあぜや川の土手などにたくさん群生する。早春、セツブンソウの咲く頃には一本も見つけることができなかったがここにきて一斉に
咲きだしたようだ。日のあたる時にだけ開く。




アズマイチゲ
純白の花の中心が紫に見えるのはおしべの元が紫なのである。白と紫の組み合わせが野の花とも思えない気高さを感じる。これもまた、県内で見かけることができるのは阿哲地域の雑木林。先月見かけたときには雨に打たれて弱弱しい状態だったが、今回は日を受けた数輪ずつの群生に出会えた。




ユリワサビ
ワサビを小型にしたような花が沢沿いの崖にたくさんさいている。よく似た一回り大きいスズシロソウに比べみずみずしい感じがいい。




ニリンソウ
花の径が2pばかりのこの花はその葉の緑のカーペットの上にちりばめられた星という感じがする。イチリンソウに対して,花茎の先にふつう2個の花をつける。やや乾いたところを好む花の径が4pほどあるイチリンソウは一足遅れで咲きだす。似ているが葉の形の違いで見分けることができる。




シュンラン
乾いた林の中にあるこの蘭には枯淡な味わいがある。庭でもよく栽培される様で、友人にいただいたりして何度か植えたがどうも我が家では花が咲かなくなってしまう。このように里山で出会うというのが私には似合っているようだ。




里山へ